コンテンツ

なずなを訪ねて 1997

先日、大分県の大野郡野津町というところへ行ってきました。とんでもない農業をやっている人がいる。一緒に会いに行きませんか。と、誘われるままに行ってきました。なにがとんでもない?のか。雑草は生やしっぱなし。虫はほっとく。化学肥料はもちろん、農薬も使わない。おいしい立派な野菜を作っているというのです。

赤峰勝人さん。「ニンジンから宇宙へ」(なずな出版部ⅱ0974-32-7111)というご本もあり、ご存じの方もいらっしゃると思います。陽に灼けた眼孔の鋭い、しかし、屈託のない笑顔がすばらしい、いかにも自然人という方でした。挨拶もそこそこにお話しは始まりました。わたくしは夢中になって聞き入ってしまいました。「また、ひとつ自分が仕事を通して感じていたことを、それでいいんだぞ」と教えていただいているようで、嬉しさと感謝の気持ちをいっぱいもって聞かせていただきました。元素記号から始まったお百姓さんのお話しは、とどまるところを知らずに壮大な宇宙を描き出しました。

■すべてはひとつ・ひとつはすべて

海の水はなぜ塩辛いか?降った雨は土に吸い込まれて、やがて地下水となって、川に流れて大地の栄養分を海に連れていきます。肉食動物は草食動物を食べ、草食動物は草木を食べます。草木はつちから栄養をもらっています。動物の死骸や枯れた草木は昆虫や微生物が食べて分解されます。そして、土になります。土の中には、大地の栄養分が入っているのです。雨水は、土の中を通り抜けながら大地の栄養分を溶かし込んで海へと流れ込みます。この過程を地球の歴史の流れのなかで繰り返し繰り返ししてきたことで海の水は塩辛くなってきたのです。ですから、海の水には地球上すべての成分が含まれている。と、話は進みます。

海の水から採れる自然海塩にも地球上の成分が含まれているということだそうです。海の水には52種の元素が確認されています。人体は54種の元素でできていることが確認されています。それらを較べてみるととてもよく似ていることがわかります。人体に必要なミネラルは自然海塩にはほとんど含まれているということです。専売の食塩は化学的に純粋な塩化ナトリウムだけでしかありません。塩化ナトリウムだけでは人体が必要とするミネラルを得ることはできません。また、塩のとりすぎはよくないというのは、正確には塩化ナトリウムのとりすぎはよくないということになります。自然海塩でしたら、人体が欲しがるだけとっても心配ありません。人体は必要なだけを欲しがるのです。そうしてとられた塩から必要なミネラルを吸収するのです。

赤峰さんはおっしゃいます。

■「害虫」ではなく「神虫」さま

さて、そこからどう農業につながっていくか。農業は土が生命だそうです。よい土には作物が育つのに必要なものがすべて含まれているのだそうです。それが、どのようにして保たれているかに赤峰さんは気づき、実践していらっしゃいます。土に必要なものを補うために雑草や虫が寄ってくるのだそうです。ですから、そこで枯れた雑草や虫の死骸をそのまま鍬で土に入れてやるそうです。それらが、土になっていき畑で必要な成分が理想的な状態で揃ってしまうそうです。昔、土が大切だと気づき、化学的に必要なものを揃えてやっていたころは、何周期目かで、畑がだめになってしまったそうです。連作障害の話をよく聞きます。この近代農業では常識的な連作障害が、実は人工的な技による障害だったということに、赤峰さんはそのお仕事を通じてわかったとおっしゃいます。赤峰さんは、畑の虫を「害虫」とは呼びません。畑に必要なものを持ってきてくれる神さまのような虫ということで、「神虫」と呼ぶそうです。神虫は確かに野菜を食べます。しかし、よい土のなかでたくましく育った健康的な野菜にとっては、人間や他の動物が食べてしまってはよくないところ。簡単に言えば毒になるところを食べてくれるそうです。そして、死んで土にかえり、新しい作物のための土のミネラルを揃えてくれるそうです。まさに「神虫」ですね。

■おいしければよく噛む

赤峰さんのところの野菜や玄米を使ったお弁当をいただきました。それは、おいしいものでした。食べているときに、赤峰さんがみなさんいつもよりもよく噛んでるでしょう?と、おっしゃいました。ふと思えば確かによく噛んでいます。玄米やほんものの野菜は噛めば噛むほどおいしいそうです。噛んでも噛まなくてもいいものを、噛め、噛めと言われても噛めないよ。と、笑っていました。またまた、自然にしているとすべてがうまくいくことに出逢いました。

■アトピーは病気ではない

赤峰さんのところにアトピーの人が、相談に見えるそうです。はっきり言って自信はなかったけど、ほんものでない食べ物で人体がちゃんとできてないことが原因だと考えていたので、しばらく赤峰さんの農園にいていただいたそうです。もちろん薬は一切使いません。ほんものの食べ物と、ほんものの塩と、よい水だけの生活。それまでの薬等々のリバウンドで、それは気の毒な状態の皮膚になってしまったそうです。しかし、そのかさぶたのようなものの下で、それはきれいな皮膚ができあがっているのがわかったそうです。すべてのリバウンドが終わってからまったくの健康な、いやそれは美しい皮膚に生まれ変わりました。それ以降は、アトピーは無縁だったそうです。その過程でも、赤峰さんの出す食べ物はアレルギー反応がまったくなかったそうです。赤峰さんは、卵がいけない、肉がいけないというのではない。その育つ過程で入り込んでいる薬品が人体に反応しているんだということです。思えば長男の光陽が生まれたばかりのころ、アトピーだと言われました。乳製品・卵・畜産物はダメだといわれてこまりました。少し薬を使っていたのですが、直感的にその方がこわく感じて、わたしは妻と覚悟を決めて、薬を辞めてなんでも食べて栄養をつけて自然治癒力を高めるように努力しました。痒くなってしまったときは、よい水でふいてあげて薬を使いませんでした。妻はそれはそれは辛い毎日だった。今の痒みが止まるなら薬を使おうと何度思ったかわからない。そう言ってます。光陽は今ではアトピーとはほとんど無縁な生活を送っています。お陰様で、もう、4歳になる元気なわんぱくに育っています。赤峰さんのお話しを伺っていて、ふとわが家の闘いを思い出しました。そのときに、このことを赤峰さんにお話ししました。それはいちばんいい治し方だったと言われました。

■犬歯は肉を食べるためにある

君はなにをしている人?ということで、ハムをつくってます。という話になりました。いつもみなさんにご案内しているようなことをお話しして、たいへん興味を持っていただきました。一度、食べたい。と言っていただきました。帰ってからさっそく、黒澤牧場の豚肉と、ベーコンと腸詰めを送りました。赤峰さんからお手紙が来ました。「自分の意識の中で肉の革命がおきました」と、書いてありました。赤峰さんは、野菜、水、塩というお話しをします。菜食の考えの方と似ているのですが決定的な違いがあります。それは、ご自分の犬歯を指しながら「この歯があるうちは、人間も肉を食べなくてはいけないんだよ」と、最高の笑顔でおっしゃいました。ますます仕事は、生きていることは、自然と一体。

みなさんと一体なんだという思いを深めることになりました。

ありがとうございました。                1997